アドセンス

2016年5月15日日曜日

「経済学の宇宙」を読んで


投資家としての素養を少しでも高めるべく、また人生を豊かに過ごすべく、通勤途上等で読書に努めています。

多くの新聞や雑誌の書評欄等で取り上げられていたことや、一度岩井先生の本を読んでみたかったことから、「経済学の宇宙」(著者岩井克人、前田裕之、日本経済新聞社)を読んでみました。

株式投資との兼ね合いという意味において、「ポスト産業資本主義」論がとても印象的でした。

以下に要約します。

産業資本主義においては、機械制工場さえ建設すれば、労働生産性と実質賃金率の「差異」に比例した利潤率が確保され、経済全体に高度成長がもたらされる。しかし、長期的には、急速な資本蓄積に伴う労働雇用の増大は、農村の過剰人口を枯渇させてしまう。その結果、工場労働者の賃金が急速に上昇し、労働生産性との差異がなくなり、機械制工場を所有するだけでは利潤を確保できなくなる。西ヨーロッパの国は1950年代後半、日本は60年代後半、韓国やシンガポールや香港、台湾は90年代後半に資本主義的発展の「転換点」に到達した。
この転換点以降、差異が利潤を生みだすためには、他の企業より効率的な技術、魅力的な製品など他との差異を意図して導入する「イノベーション」が必然化される。これを「ポスト産業資本主義」という。しかし、ポスト産業資本主義の時代は、すべてが絶えず変化する時代であり、イノベーションによって創りだされた差異も競争により永続するものでなく、革新し続ける必要がある。利潤は差異からしか生まれないため、それぞれの企業が永続的に利潤を生みだしていくには、創造的破壊が必要である。

大学等で経済学を学んできましたが、合理的な個人の振る舞いを前提とするなど、いささか簡略化しすぎており、現実の問題の解決にはつながらない学問との印象が強かったのですが、今目の前で起こっている企業間の競争は、これまでの資本主義のルール「利潤を生みだすには差異が必要」となんら変わっておらず、現実の事象を明確に説明していると感じました。

企業間の競争が非常に激しくなっていることは意識的に差異を生み出さない限り生き残れないことの裏返しであることから、経済的な「濠」をとらえることの重要性を再認識しました。

本書は、新古典派経済学とケインズ経済学の関係など、多少経済学をかじったことのある読者に「そういうことだったの」と経済学を改めて整理してくれる他、、サミュエルソンやトービンなど経済学の巨匠も登場するので、473ページにもわたる大著ですが、非常に興味深い内容となっています。

ご一読をお勧めします。



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