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2016年7月31日日曜日

年金運用の損失について考える


年金積立金管理運用独立法人(GPIF)が公的年金の2015年度の運用実績が5.3兆円の損失となったことを発表した。

これを受け、野党による政権に対する責任の追及の動きがみられることや国民の大切な財産が失われたなど損失面ばかり強調するような報道がなされているので一言。

損失をことさら強調する人達は積立金の運用はどうあるべきと考えているのか。

まず資金の性質上元本確保が第一であるから日本国債の1点買いをすべきなのか。日本の財政事情は極めて悪い状況であり、そんな国の国債に全額投資すべきでないことは明らかだ。また、日銀のマイナス金利政策により国債の金利は10年債でマイナス金利、超長期の30年債で0.2%程度であり、利回り確保の観点から国債は魅力的な投資対象ではない。

さらに言えば、仮に国債は投資対象として安全だとしても、金利動向によって価格は変化する。将来、景気が良くなって金利が上昇した場合、また財政破綻リスクが高まり金利が上昇した場合、国債の価格は低下し含み損となる。特にバブル崩壊後、金利低下しか経験していないので、債券投資は安全と考えられがちである。

今回の運用実績では国債は2兆円の評価益を計上しているが、金利上昇局面ではその逆の事態が発生する。むしろマイナス金利の世界なので、金利は将来上がるしかないと考えるべきである。また、今後の国債投資は金利が多少つく超長期債のウエイトが高まることが想定される。債券は償還期間が長いものほど価格変動が大きくなることから、含み損も大きなものとなる。

続いて、リスク削減の観点より、分散投資すべきであることに異論はでないが、分散投資はどんなものだろうか。

年金積立金は134兆円に達することから、市場規模が大きく、いつでも換金できる流動性の高い商品で運用することが求められる。

国内を考えると、REITやオルタナティブ投資等の投資対象もあるが、国債を除き市場規模の大きな株式をはずすことはできない。また、分散投資の観点から、海外ものにも投資すべきであり、国債の他、同様の理由から、株式への投資が必要となる。

もっとも、単純に考えて株式を含めないポートフォリオの構築は考えられないし、将来の積立金不足が指摘されているのに経済成長の果実を得られる株式に投資しない選択肢は考えにくい。

したがって、運用成績は相場の状況により良化したり悪化したりする。人生と同じでいい時も悪いときもある。投資する以上、損失の発生は避けられないし、そのために様々な資産に分散投資する。実にあたりまえのことである。

損失はけしからんという報道をみていると、投資は常に100%勝つもの、勝たなければならないものと考えているように思える。なので分散投資についてあたりまえのことをくどくど説明してみた。

ではこの発生した損失をただ仕方ないと言って終わりにしてしまうべきなのか。損失額ばかりを強調するのではなく、相場の影響を除いたインデックス対比の投資成績で議論すべきである。インデックス比運用成績が悪くて初めてGPIFの責任を問えるし、けしからんと言えるようになる。

テレビや新聞の報道でもインデックス対比の運用成績についての論評がみられない。あたりまえなのでそんなことに触れていないだけのだろうか。

結局、政治家、国民の投資リテラシーの低さが凝縮されたニュースであったように思う。



投資は自己責任で。
応援よろしくお願いします。

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